一般財団法人 全国落花生協会

落花生の話題

落花生の名前

国際命名規約(植物の学名に関する国際的な取り決め)では、落花生の英語名は「グラウンドナッツ」。落花生の実り方がそのまま名前になっています。地中で実る特性を表した名前にはイギリス「アースナッツ」、フランス「ポア・ド・テール」などがあります。では、ピーナッツは? イギリスでもピーナッツという名前で呼ばれていたという説もあり、また、アメリカでも南北戦争まではグラウンドナッツと呼んでいたともいわれていて、発祥ははっきりしません。しかし、アメリカでは20世紀初頭にはピーナッツが定着したようです。「落花生」という名前は中国が発祥とされており、日本に伝わったのちの江戸時代以降の記述にも落花生とあります。また、落花生のほかに「唐人豆(とうじんまめ)」「南京豆(なんきんまめ)」などの和名もありました。世界各地に様々な名前がありますが、落花生とピーナッツは同じものです。

アメリカ南部と落花生

アメリカでは、南北戦争以前、落花生は奴隷や貧しい人たちの食べ物と考えられていたようです。しかし、南北戦争以降、味がよくて腹持ちのよい落花生は、アメリカ人のスナックの主流になっていったそうです。そしてピーナッツバターが誕生すると、爆発的な人気となり、アメリカの料理文化に対して類を見ないほど、短期間で大きな影響を与えた食品といわれています。ちなみに、アメリカ合衆国第39代大統領、ジミー・カーター氏はジョージア州の落花生農家の生まれだとか。

アメリカ南部では、落花生を使ったレシピもたくさん誕生しました。日本ではその情報がなかなかみつかりませんが、前菜からスープ、メインディッシュ、多様なデザートなど、多彩なものだとか。ところで、落花生の主産地である南部では、収穫期になるとスーパーでも生の落花生が売られるそうで、ハイウェイ沿いでは「茹で落花生」の看板をよく見かけるそうです。

沖縄とブクブクー茶

中国から日本に落花生が入ってきた経由地の候補、2つのうちの1つと推測される沖縄。1429年に琉球王国が成立してから450年にわたり独自の琉球文化を築きました。特に、中国の使者や薩摩の役人をもてなすための宮廷料理として発達したといわれる食文化は、早くから行われていた中国や東南アジアとの交易や亜熱帯の気候風土によって、非常に特徴的なものです。落花生を使った料理としては、生落花生の絞り汁を使う「ジーマーミ豆腐」が有名ですが、赤く染めた落花生のトッピングが鮮やかな琉球王朝の祝い菓子「鶏卵糕(チールンコウ)、ピーナッツバターを使う香り高い餅「ナットゥンスー」などがあります。

中でも興味深いのは「ブクブク―茶」。木鉢に煎り米を煮出したお湯とさんぴん茶と番茶または清明茶(シーミー茶。さんぴん茶より高発酵の香り高い茶)を入れ,大きな茶筅で泡立て,それを少量の赤飯の入ったお碗にソフトクリームのように丈高く盛り、煎った落花生をかけたものです。起源については中国伝来説や日本の茶の湯説などがあり定かではなく、また、琉球王国が生んだ独自の茶の湯であるという説や民間発祥であるという説があります。

一時は途絶えてしまったブクブク―茶ですが、新島正子さん,安次富順子さん親子が情報を収集し、昭和初期まで飲まれていたものを復元しました。「沖縄伝統ブクブクー茶保存会」も発足し、今ではアレンジしたものも含め、沖縄でいただくことができます。

落花生の歌

詩人、童謡作家として数多くの名作を残したサトウハチロー氏が、「落花生(なんきんまめ)」という童謡をつくっています。詩では、漢字の落花生に、中国から伝わった豆として付いた落花生の異名「南京豆(なんきんまめ)」をあてています。落花生の特徴を端的に盛り込んだ、微笑ましい内容が印象的です。特に、落花生に顔を描いてから食べるアイデアは、子どもと一緒に試しても楽しそうです。

主要参考文献:
前田和美著『ものと人間の文化史154 落花生』(法政大学出版局)
与田準一編『日本童謡集』(岩波文庫)
新島正子、安次富順子著『母と娘が伝える琉球料理と食文化』(琉球新報社)
その他参考:
大槻暢子「沖縄におけるブクブク茶の現状と歴史」(関西大学学術リポジトリ)
「沖縄の伝統的な食文化」 https://ryukyuryouri.com/